フェレットの飼い方と健康管理
現在ペットとして飼われているフェレットは2000年以上も古い文献に登場する野生のヨーロッパ毛長イタチが祖先と考えられています。彼等は典型的な肉食の動物で、狭い穴や隙間にも入って行ける体の構造を持っていることから、ヨーロッパでは600年も前から狩猟の有能な助手として家畜化されてきました。即ち、フェレットがウサギや齧歯類を彼等の棲み家である狭い穴に放たれて、獲物を飼い主であるハンターの待ち構える別の穴から追い出します。獲物が出て来た所をハンターが捕らえと言う具合に利用されていました。
最近ではペットというよりも、生活をともにするいわゆるコンパニオン・アニマルして、もっと密接な関係のなかで飼われるようになってきました。そのため狩猟能力は低下し、もはやヒトの保護なしでは生きて行けません。
若いフェレットは大変好奇心が強く、興味のあるものはかならず咬んで検査します。あなたの手や指も彼等にとっては格好のおもちゃに映ります。もし、手や指を傷つけられたくなかったら、躾(しつけ)をしなくてはいけません。それには、襟首でつかみあげて頭を軽くたたいて手や指を咬んではいけないことを繰り返し教えます。ハムスター・モルモット・ウサギ・子猫などを攻撃することもありますから、また、人の赤ちゃんを攻撃することもありますので 特に注意してください。
餌と食生活
1、 フェレットは完全な肉食獣で、動物性蛋白質を短時間(3〜4時間)で消化してしまう大変短い腸を持っています。 従って、繊維を消化・吸収することができません。
2、 消費カロリーは体重1kgあたり1日200〜300カロリーです。
3、 一度に沢山食べることはせずに、一日10〜12回位に分けてたべます。 オスで50〜70g/日. メスで40〜60g/日.
4、 半生タイプや缶詰では高温時腐りやすいし、また、歯垢がつきやすい動物であることを考えあわせると、ドライ・フードが最適です。フェレット用を必ず与えてください。ドライ・フードは金属の缶に入れ、さらに冷蔵庫で保管しておくことをお勧めします。
5、 蛋白質は 最低34%は必要です。これらの蛋白質は植物性(大豆蛋白・トーモロコシ蛋白)よりも動物性(肉類)が必要です。 穀類(特にトーモロコシ)を多く含む食生活は膀胱結石を起こす可能性があります。 生の肉を与える必要は全くありません。必ず火を通してから与えてください。栄養的には全くかわりませんし、寄生虫や細菌感染の心配もありません。魚は普通好みません。
6、 脂肪も20‾30%が望ましいです。美しい被毛を保つためにいろいろの脂肪酸が必要です。市販の製品で補うこともできますが、少量のバナナやブドウをおやつとして時々与えることでも補給できます。また、ビタミンEも必ず必要で、バターには多く含まれています。
水
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新鮮な水をいつでも飲み安いように用意しておきます。ステンレス製のウォーターボトルをケイジの外からしっかり金具で固定しておきます。フェレットの性格上、手の届くものはすべてオモチャにして遊んでしまいます。 各種容器は重いものか、完全に固定して おくべきです。 1日に75‾100ml位飲みます。
ビタミンとミネラル
高品質のフードで、冷蔵庫に保存していたものを与えていれば、特に意識して補給する必要はありません。 ビタミンのうちA・D・E・Kは脂溶性ビタミンで過剰摂取すると、体内からなかなか排泄できずに、激しい中毒症状を呈する場合がありますから、注意が必要です。栄養補助剤の与え過ぎではビタミンAの過剰症で最初は脱毛、食欲不振、体重減少、骨の脱灰、生長停止、知覚過敏やがては肝不全で死亡することもある。
その他の食べ物
火を通した肉や卵などは適当なものですが、骨は与えないでください。果物や野菜は少しずつならかまいませんが、前にも述べた通り食物繊維は消化できませんので、粘液性の 軟便となります。 砂糖をたくさん含む菓子類は絶対与えないでください。膵臓に悪い影響を与えて、糖尿病を起こす可能性があります。
毛球予防
フェレットは自分の毛を舐取って呑み込みます。毛は胃内にたまり、やがて毛球となって、胃の出口を塞いだり腸閉塞の原因となります。毛玉を吐き出すことはめったにありません。ラキサトーンという猫用の毛球緩下剤を週に2回、1〜2cmなめさせてください。
特に換毛期には必ず毎日飲ませてください。また時々ブラッシングしてぬけた毛を取ってやってください。換毛期には毎日行ってください。
飼育環境の点検
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フェレットが安全で快適に生活できるように生活環境を点検することをFERRET PROOFING(フェレット対策)といいます。
フェレットは脱走の名手です。 最低3cmの隙間があれば通り抜けれます。ソファや家具、家電製品の下に入り込ませない工夫をしなければなりません。簡単な工事が必要かもしれません。電気製品の下に入り込むと配線をかみ切って感電死したり、火災の原因にもなります。
洗濯機や掃除機のホースも危険です。
電気コードはとくに危険です。
屋外への抜け道となるルートにも気をつけてください。
噛ちぎって飲み込み腸閉塞をおこす恐れのあるもの。
ゴム製やプラスチック製のおもちゃ
ゴムのついた製品(イヤフォン、スピーカー、靴、スリッパ、輪ゴム)
発泡製品(スポンジ)
植木
これらのうち部屋から出せるものは出してください。あな� �の目線をフェレットの目の高さまで下げてください。四つん這いになって、立った目線では気がつかない危険物や穴を見つけてください。
比較的安全なおもちゃとしては金属製の缶、紙袋、ダンボールでできた厚紙の筒、硬いプラスチックやナイロン製品があります。かみ切れない物に限ります。それでも毎日噛ちぎってないか確認してください。だんだん小さくなってやがて呑み込むかもしれません。
必ず毎日FERRET PROOFINGをすること
睡眠
フェレットは"巣"で寝るのを好みます。また柔らかい布等で包まれて眠ることが好きです。布製のハンモックの上でもよく寝てくれます。
トイレ
トイレの砂は細かい固まる砂よりもペレット状のものが良いでしょう。あまり量を多く入れますと、穴を掘ってもぐってしまいます。猫のように砂を上からかけませんから、浅く、少量でかまいません。
環境
フェレットは暑さに特に弱くて、摂氏33度で湿度が高ければ、たちまち日射病になります。暑い日に狭いケージに入れての移動や換気の悪い車での移動はとくに注意が必要です。真夏などにはボトルに水を入れて凍らせ、これをケージ内に固定して冷たい環境を作ってやってください。
定期的な手入れ
爪きり 2〜3週間に一度、ほんの先だけを切ります。
シャンプー フェレットの体臭の強さは不妊手術をしていれば、そんなに強くありません。また、皮脂の分泌も少なくなります。 この種類に独特な麝香(ジャコウ)の臭いの好き嫌いによってシャンプーの頻度を変えてください。 洗い終わったら、直ちにドライヤーで乾かしてください。 少しでも濡れていると、震えていますから、ハァー・ハァーと息がするまでドライヤーで乾燥させてください。 過度の入浴は体の健康保持に必要な皮脂や被毛の脂も落とし過ぎます。せいぜい月一回程度で、それでも多いかもしれません。
耳そうじ 綿棒で優しく耳アカを取ってください。
なぜ犬のこぶに何オス?
歯みがき 歯石のつき易い動物ですから、小さい時から歯磨きの習慣をつけておくことは極めて大切です。一番小さな歯ブラシに赤ちゃん用の歯磨き粉をつけて、最初は軽く歯に触れるだけにして、だんだん慣らしていきます。一カ月位で歯の内側さえも磨けるようになります。
フェレットは遊ぶのが大好きな動物で飼い主ともよく遊びます。"WEASEL WAR DANCE"(イタチゴッコ)は見ていても楽しいものです。アパートのような狭い環境でも手軽に飼えるため、都会人の理想的なペットになるでしょう。
成獣の標準的な体重はオスで1‾1.2kg, メスでは0.1‾1.5kg
秋には皮下脂肪が増加し、春には減少する。その変化は体重の30‾40%に達する。
歯から年令を推定する方法
乳歯は約14日で萌出し、永久歯は47‾52日で生え変わる。
1年未満 ・・・・・・・・・ 歯は真っ白で、不透明
2年目 ・・・・・・・・・ 歯根部に近い1/3がやや半透明化
3年目 ・・・・・・・・・ 歯が象牙色になる、半透明部分が広がり、歯全体になることもある。
4年目 ・・・・・・・・・ 歯が黄色っぽくなり、欠けることもある。
5年目 ・・・・・・・・・ 歯がほぼ全体に半透明化
6年目 ・・・・・・・・・ 歯は濃い黄色になり、ほぼ透明となる。
性成熟は生後9〜12ヶ月, 妊娠期間は42日、10日前から巣作りを始めるのでオスとは別居させる。平均8頭産む。
年老いたフェレットの管理
1、 老齢のフェレットはもはや若い時と同じようには動けなくなってきます。また、よく眠るようになってきます。普通起こせば起きますが、なかなか反応しなかったら、あるいは病気によって低血糖の発作をおこしているのかもしれません。極く初期には2、3秒宙を見つめ、すぐ普段の状態に戻ります。
2、 関節炎も多く発生しますから、生活空間を板で坂を作ってあげるとか、改善する必要があるでしょう。
3、 腸や膀胱の調節も年とともに衰えますから、トイレの場所を多くしてやってください。
4、毛並みも衰えますが、脱毛、発赤、鱗状に変化する、腫れ物、できものなどに気がついたら、すぐに獣医師に相談してください。
5、足の裏の肉球は硬く、乾燥してきますのでビタミンEオイル、バセリン、ニベアクリームなどを擦り込み柔らかくして、硬くなった部分を取り除きます。
6、被毛もぬけ易くなりますので、ラキサトーンは一日置きに与えてください。換毛期には毎日与えてください。
7、体重の減少、食欲不振、下痢、呼吸困難、衰弱なども注意深く観察して、すこしでも変化があれば獣医師の診察を受けましょう。
8、不妊手術をしているにもかかわらず、おす・めすとも発情の様子を示すようであれば、また体臭が強くなったとか、脱毛が激しい、首や背中に強い痒みをともなって皮膚が鱗状になってきた、激しい貧血や出血が止まりにくいなどは副腎の腫瘍が強く疑われます
参考文献
International Seminar Of Ferret Care And Health 10th,Nov,1996.
Lecturer, Rene C. Gandolfi,working at Castro Valley Companion Animal H.
健康管理プログラム
初期検診
フェレットを手に入れたらなるべく早く動物病院へ連れてゆきます。この時、消化管内の寄生虫の検査もしますから、 糞便を乾燥しないようにサランラップに包んで持って来てください。 次の事柄について検査します。
獣医学的健康診断
検便
基礎データーとなる血液検査(完全血球計算)
フェレットの習性・食生活・そのたの飼育上のアドバイス
健康状態がよければ、ジステンパーのワクチン接種
フェレットの伝染病としてのジステンパーは犬のジステンパーと全く同じものです。犬からも、フェレットからも簡単にうつります。一旦発症すると100%死にます。
1、最初はしきりにクシャミをし、膿の鼻汁と目ヤニを出します。
2、唇やあごにかさぶたや赤く腫れて、湿疹ができます。内股の所にもできることがあります。足の裏の肉球が肥厚・増殖、 光をこわがることもある。
3、やがて昏睡状態となり、痙攣を起こして死亡します。
人の流行性感冒(インフルエンザ)はフェレットに感染します。また逆の場合もありますから、お互いに注意が必要です。
第2回検診
生後3カ月目に来院してください。
ジステンパー・ワクチンの再接種。免疫は一年間続きます。
蚊に刺されると犬のフィラリア(心臓内に寄生する糸状の虫)にかかります。 6〜12月の間、月に一度薬を飲ませてください。大変有効です 検便 →検査材料を持参してください。
第3回検診
三歳までは特に異常がなければ一年に一度の来院でよいでしょう。
毎年一回ジステンパー・ワクチンを接種してください。
当院では接種時期になると、葉書でお知らせしております。
検便 →検査材料を持参してください。
平均してフェレットの寿命は5〜7年です。3才以降急速に年をとっていくので、 三歳からは半年毎の健康診断をうけましょう。
獣医学的健康診断 特に血液検査による総合検診
全身のレントゲン検査と超音波検査
歯石の除去
毎年のジステンパー・ワクチンの接種
老齢のフェレットでは癌の発生が多く、統計上50%以上のフェレットが一生の間になんらかの癌にかかると言われています。予防することはできませんが、注意深く観察したり、定期的な検査によって早期に発見することが極めて大切です。早期に発見できれば、癌が転移する前に摘出できるかも知れません。癌そのものを治せない場合でも、フェレット自身のより良い生活を維持するための医療が開始できる場合があります。
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